[vc_row padding_top=”10px” padding_bottom=”30px”][vc_column][vc_column_text]閑話休題――太陽がまぶしく差し込む朝、空気がすがすがしく澄んでいる朝、近くの神社の森や小川の水辺をぶらぶらと散歩していますと、なんとなく、気分がウキウキとしてきて、体の不調など忘れてしまうことがあるものです。これが、心のトキメキでしょう。[/vc_column_text][/vc_column][/vc_row][vc_row padding_bottom=”0px”][vc_column][ultimate_carousel slides_on_desk=”1″ slides_on_tabs=”1″ slides_on_mob=”1″ arrow_style=”square-bg” arrow_bg_color=”#3083c9″ arrow_color=”#ffffff” dots=”off” adaptive_height=”on” item_space=”0″][vc_single_image image=”7260″ img_size=”full”][vc_single_image image=”7261″ img_size=”full”][/ultimate_carousel][/vc_column][/vc_row][vc_row][vc_column][vc_column_text]
ほんとうに、人間のいのちって不思議なものですね。
少し気温が下がったり、湿度が上がったりするだけで、気分がよくなったり、悪くなったりします。ちょっと理屈っぽくいわせてもらえば、人間の体温は1度下がるだけで、免疫力が40%も落ちるというのですから、何気ない日常のウキウキや、トキメキの爆発がたしかに、鬱々とした不安など一瞬、吹き飛ばしてくれるときがあるのでしょう。
きっと、こうした“心の小爆発”の繰り返しが、数珠(じゅず)のように繋がって、僕は「ガンを切らずに延命」できたのではないか?
ウツウツがきたら、必ず、トキメキがやって来る・・・
これは人間が持つ、いのちの特権なんだナ、だから、僕たちは生きることに「爆発したがる」んだ、有り難い気分だと、最近はしみじみと思うようになりました。
さて「トキメキは最大の良薬である」・・・この「心の小爆発」という言葉ですが、どうも、別に、これはガンになってからではなく、僕の少年の頃、どこかで聞いたといいますか、誰かに教わっていたような気がしてなりませんでした。
どうしても思い出せず、いつも心の奥にひっかかっておりました。
ところが、先日、ひょんなことから、50年ぶりに、その謎が解けたのです。
僕が高校生の頃、「大河原忠蔵」さんという、なんとも立派な名前の国文学の先生がおられました。
大柄でとても笑顔がふくよかで、島崎藤村の「千曲川旅情の歌」などを透き通るような声で浪々と読んでくれる先生で、授業では、必ず「人生とは何か」という命題を生徒に出して、僕たちの煩悶についても一緒になって語り合うものでしたから、まさに、心にズシンと残る恩師であったわけです。
とうとう、この1月の末に、お宅に伺う機会を得ました。
84歳にして、風貌も変わらず、にこやかな笑顔も変わりません。
懐かしいだけでなく、とても嬉しく思いました。
お宅の応接間に座るや、まるで50年の歳月の壁など吹き飛ばすように、あの先生の浪々とした講義が始まり、僕はうっとりと聞き入ったのです。
開口一番、「人生とは何か?」、「人生は爆発!」だ・・・という、あの懐かしい名調子が先生の口から飛び出したのです。
ああ、これだ、これだ! 僕に、トキメキ=「心の躍動」「心の爆発」「心の元気」の素晴らしさを教えてくれたルーツは大河原さんにあったのだと、思い出したのです。
大河原先生は明治学院というミッションスクールの高校教師から奈良教育大、奈良女子大、武庫川女子大などの大学の教授に転進。
一方で、40歳から64歳の4半世紀にわたって、NHKのテレビとラジオの通信講座「現代国語」で国語表現学も講義しておられました。
皆さんの中にも、学生の頃にご覧になった人がいるかも知れません。
僕も社会人になってからもときどき拝聴し、元気で講義を楽しんでいる様子は知っておりましたが、面と向かってお会いする機会は逸していたわけです。
大河原さんの授業のテーマは、著書にもなっている「文学的思考へのいざない」(東北大学出版会)と題するものですが、このコラムの読者の皆さんにも分かるように意訳しますと、小説や詩歌、随筆など、一流作家や詩人の文学作品を読むことによって、自分の人生を「ときめかせる」というユニークな国語表現講座です。
200人近い「近現代の英知」に、精力的にインタビューした番組でしたから、ズバリ、実践的かつ知的な人生学講座というわけで、
多くの教え子に感銘を残し、大学ではもちろん、NHKの講座を25年間も続けた所以でしょう。
ともあれ、先生と奥様には、50年ぶりにお会いしたわけですが、眼前に写真やテープ資料を並べて、3時間に渡ってNHK講座を再現。
「人生とは何か?」「人生は爆発だ!」という、パワフルな講義を速射砲の如くに話して聴かせて下さったのです。
さて、大河原さんの質問に「近現代の英知」はどう答えたか?
番組テーマと結論の一部をQ&Aで紹介させていただきます。
●湯川秀樹 「創造者としての人間」――
Q=造花を作るのも創造ですが、先生にとって「創造」とは何ですか?
A=おもろい質問ですな。私のは“ごっつい創造”です。
(ちなみに、関西弁で「ごっつい」とは、とてつもなく凄いという意味)
●武者小路実篤の世界――
Q=人生とは?
A=心が本当に喜んで、心が素直にこういうことをしたいと思うのは、
自分がしたいと思うのではなく、自分をつくったものが、
何かそれをさせたがっている(略)
●梅棹忠夫 「発見の手帳」――
Q=創造とは、人生とはなんですか?
A=知的なプレーボーイを楽しむことです。
そして、一連のインタビューの中で最も気のあった相手が画家の岡本太郎さんだった・・・と、最後に大河原さんが、奥さんと嬉しそうに語ってくれました。
●岡本太郎 「民族の生命力」――
Q=人生とは、芸術とは何ですか?
A=わははっ、オギャア・・・だよ。
僕は久しぶりに元気をいただいいて、ウキウキしながら先生のお宅をあとにしたわけです。
希望のトキメキ=生命の躍動(エラン・ビタール)が人間の「創造的進化」を左右するといったのは、フランスの哲学者アンリ・ベルグソンですが、きっと、「人生の爆発」を愉しむ=「知的にプレイボーイ」することが、人間に計り知れない、いのちのパワーをもたらすものなのでしょう。
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