《第69号》生命在脚下 希望在心中―無理に明るく前向きを装っても≪希望≫は生まれない

2009 関根進いのちの手帖

≪生命在脚下 希望在心中≫――

これが僕の主治医の帯津良一博士の生命観・人生観の土台であり、治療方針の基本です。

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「私が考えたのではなく、北京の郭林新気功の師である、

于大元(うたいげん)さんから教えて貰った言葉です。

≪いのちはあなたの足元にあります。希望はあなたの心の中にあります≫

という意味です。

私も于大元さんも多くの人に気功を奨めており、

気功をしている人の方がガンの予後がよくなっている。

≪希望≫を持って生きている人が多いとわかりました。

しかし、ガンとの闘いに

≪希望≫を持つということはなかなか難しいことです。

≪希望≫の方程式などないわけです。

于大元さんは中国全土を行脚しながら、

『自分の心の中をじっくり覗いてください』――

そうすれば必ず自分の力で考え出すことが出来ると説いていました。

≪脚下照顧(きゃっかしょうこ)≫という諺もありますが、

これはあちこちと願望を求めるのではなく、

自分の足元をじっくり見て自分で考える力をつけましょう――

つまり、自力更生という意味です。

≪生命在脚下≫と≪希望在心中≫の二つが、

ガンとの付き合い方を象徴している、とてもすばらしい考え方だと思い、

于大元さんに揮毫(きごう)していただき、

私の病院のロビーに額つきで飾って

多くの患者や家族の皆さんにも紹介しているわけです」と。

もう10年前ですが、この言葉を聞いた瞬間、

ガンでウジウジと悩んでいる迷いが晴れて来たことを思い出します。

手術が上手い“神の手”のような医師はいないか?

魔法のような抗ガン剤はないのか? どの大学病院がいいか?

よい代替療法はないのか? と、

あれこれと他人頼みに逃げ迷うのではなく、

こうなったら≪自力更生でいのちを掴もう≫――

心を入れ替えて、ガン闘病の覚悟が決まったわけです。

2・3カ月に1度、検査と診察を受けに病院に行きますが、

先ずは、ロビーに掛っている、この≪いのちの揮毫≫に黙礼、復唱。

そして診察室に伺います。

いまや、図々しくも、孫引きさせてもらい、

僕自身の座右の銘とさせていただいているわけですが、

帯津医師はいやな顔もせず、

「ハハハ、どうぞ、どうぞ、役立ててください。

きっと元気が出ますよ」と、にこやかに笑うではないですか。

古来の金言といえば、

≪名は体を表し、体は心を表す≫という言葉がありますが、

帯津さんはなかなかの福相の持ち主です。

丸顔童顔でちょっとメタボな?お腹ですから、

≪仙人≫というより七福神の≪布袋(ほてい)さん≫という感じです。

お会いして顔を見るだけで「癒される」という女性の患者さんがたくさんおります。

ちなみに布袋さんは≪弥勒菩薩の化身で来世まで衆生を守り救ってくれる≫

といわれます。

帯津さんは≪絶望≫にうちひしがれた患者の心を

≪希望≫という真綿でふわーと包んでくれるオーラに満ちた人なんですね。

洋の東西の医学の学識と経歴では

日本で他に追従する人を知りませんが、

患者の目線に立って人生再設計の言葉を

“風”のように送ってくれるから“温かい”のでしょう。

いま心理学で“コーチング”という言葉が流行っています。

有名スポーツ選手のメンタル・トレーニング(自律訓練法)で有名な

福島大学人間発達文化学類教授の白石豊さんの本を読んでいると

コーチcoachとは

「馬車に乗せて目的地に連れて行く人」という意味だそうですから、

まさに、帯津さんは心おおらかな布袋さんです。

さて、帯津さんとの≪縁≫を結んでくれたのは、

僕が週刊誌の編集長をしていた頃に仲良くしていた

和田努さんという医療ジャーナリストであり、

その親友の横田誠さんでした。

≪縁≫が思わぬ≪縁≫を広げ、

ついに「ガンを切らずに寝たきり」ではなく、

「元気で長生き」の≪幸運≫を次々と、

僕に、もたらしてくれたことになりました。

帯津さんの治療法もさることながら、その希望の金言が最良の薬となりました。

まさに「言葉は力なり」なのです。

この帯津医師の「生命在脚下 希望在心中」の話の続きは、また来週。

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