代替医療、ホリスティック医療の第一人者帯津三敬病院理事長帯津良一先生のインタビュー

インタビュー
  • 1936年埼玉県川越市生まれ。
  • 東京大学医学部卒業、医学博士。
  • 東京大学医学部第三外科に入局し、
  • その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。
  • 2004年には、統合医学の拠点となる帯津三敬塾クリニックを池袋に開設。現在に至る。
  • 日本ホリスティック医学協会名誉会長
  • 日本ホメオパシー医学会理事長

健康な暮らしを営むために「己を知る」、つまり、自分の健康状態を把握して、元気なうちから病気にならないように心がけ、健康維持していくことがとても大切です。
では、そのためにはどうしたら良いのでしょうか。

西洋医学と漢方(中医学)医学を結合し「人間をまるごと診る」治療を取り入れて、多くのガン患者さんを救ってきた帯津三敬病院の理事長帯津良一先生が、国際中医師大屋玲子先生の単独インタビューに応えてくださり、漢方と体質について、お話を伺ってまいりました。

いま困ってるこんな症状、あんな悩みも、漢方で解決!!

「本当はいつも明るく元気でいたいのに、ブルーになってしまう……」
「病気とまではいかないけれど、憂鬱な症状に悩まされて……」
加齢による体力の低下や更年期障害、ストレス、不眠などでお悩みの方に。

漢方で体質改善
人生100年時代
漢方のちからで、体質改善をはかると共に
身体本来もつ抗病力(=免疫力)、治癒力、健康力を高めることができます。
寝たきり長生きではなく、「元気で長生き」生涯現役を目指しましょう!

取材日時:2021年11月30日(Tue)

取材場所:帯津三敬病院・埼玉県川越市

大屋
大屋

最近よく「漢方で体質改善」という言葉を聞きますが、漢方と体質について教えてください。

帯津良一 先生
帯津良一 先生

中国医学(漢方医学のもと)は臓器同士の関連性を重視します。心臓も肝臓も腎臓も、身体の生命場の中にあり、臓器は身体の中の状態に大きく影響されます。私は、漢方は「命の場」に働きかけていると思っています。西洋医学は「身体」に働きかけているけれど、漢方はもっと深い所にある「命の場」に働きかけているから、これは西洋医学よりも上の医学だと思うのです。

私たちの身体の中に「生命場」という場があります。いわゆる電磁場と重力場と同じように、身体の中に「命の場」があるわけです。

とは言っても、命そのものが科学的に解明されていないので、エビデンスが乏しいという難もあります。相手は「身体」ではなく「命」ですから、私たちの身体の中にある生命場のエネルギーが、なんらかの原因で歪んでしまう現象が、漢方でいう人それぞれの「証」にあたります。その「証」で現れる身体の歪みを見つけて、直すべく方向と方法を決めるということが、「体質改善」になるわけです。

細胞と細胞との間にある空間、臓器と臓器との間にある空間、これが生命現象に大きな影響を与えていると捉えます。私はこの空間を「生命場(せいめいば)」と名付けました。


とは言っても、命そのものが科学的に解明されていないので、エビデンスが乏しいという難もあります。相手は「身体」ではなく「命」ですから、私たちの身体の中にある生命場のエネルギーが、なんらかの原因で歪んでしまう現象が、漢方でいう人それぞれの「証」にあたります。その「証」で現れる身体の歪みを見つけて、直すべく方向と方法を決めるということが、「体質改善」になるわけです。
だた「体質改善」と言ってもピンとこない人が多く、自分の「証」だと言っても、素人ではなかなか理解できないことかもしれません。
実際に、患者さんから「健康維持や体質改善したいのですが、これをやってもいいですか?」「あれを受けてもいいですか?」「どう判断したらよいですか?」とよく質問されます。その時いつも患者さんに、「それをやると気持ちがいいのであれば継続してやればいい、気持ち悪いと思うならやめればいいという判断をしてみてはいかがでしょうか」と、お答えしています。
漢方で体質改善を図りたい場合は、その漢方を選ぶ時、まず自分の直感を大事にすることです。ようするに漢方をパッと見たとき、「これでやってみよう」という気持ちになったら、それを信じてしばらくトライしてみて、気持ちが良ければ継続すればいいし、なんとなく合わないと思ったらやめればいいのです。つまり、身体に摂り入れて気持ちのいいものとは、身体に合っているということですので、継続してみる価値があります。
もちろん漢方を選ぶ前提として、科学的な根拠(エビデンス)のあるものを選ぶのが基本で、かつ重要なポイントになります。

大屋
大屋

自分の体質を知るための「セルフ体質判定」について、どうお考えですか。

帯津良一 先生
帯津良一 先生

近年、中国衛生部が定めた「セルフ体質判定」というセルフ体質チェックが、日本の一部

の大学や民間団体にも取り入れられているそうです。私は、自分の身体の状態を知るため

に、セルフ体質判定を大いに活用すべきだと思います。自分の「証」を考えながら、自分に合う食事や運動、――例えば気功で体質改善を行いながら健康維持をはかると良いと思います。つまり、自分の身体の状態を知ることが大切です。自覚できる何らかの症状は、病気を知らせる身体からの注意信号です。そのため、自分の体質(証)を知ることが、症状の改善・体質改善につながります。

セルフ体質判定 ⇒ https://taishitsu.kenko-yojo.org/

特定非営利活動法人健康養生塾協会
大屋
大屋

ホリスティック的な考えから、漢方の一環である気功や太極拳なども健康体質を維持する方法の一つであると考えてよいのでしょうか。

帯津良一 先生
帯津良一 先生

気功や太極拳は、健康維持にはとてもいいですよ。うちの病院には気功の道場があり、多
くの患者さんや、外部の方が参加していました。今は、コロナ禍の影響で道場は閉鎖しています。病院を始めた当時は、私を中心に気功をやってきましたが、途中で患者さんらが自発的に「患者の会」を創設したんです。毎週金曜日の午後に、自由参加型で道場に集まって患者交流会のようなかたちで行ってきました。ガンの手術をして30年経っている患者さんも元気にいらしてましたね。
気功は、論文からみるとエビデンスはないですけれど、こうして実質的に30年以上やってきて、ガンにうち克って元気に生きている患者さんがいるということは、ひとつの実績になると思います。私も気功がとても好きですので、道場を閉鎖する前は、いつも患者さんと一緒にやっていました。今は、2週間に1回、外の道場に出向いて続けています。

大屋
大屋

気功の利点について教えてください。

帯津良一 先生
帯津良一 先生

気功の利点は、調息、調身、調心ができることです。
「調息」は、口から息を吐くことを重視しています。その理由は、吐く息と共に体内の「エントロピー(※)」を外に捨てられるからです。「エントロピー」とは、聴き慣れない言葉だと思いますが、身体の中で様々な生命を維持するための反応が行われ、その反応に使われるエネルギーが変換されることで発生するのが「エントロピー」です。体内の「エントロピー」が増えると身体の秩序が乱れ、健康を害されます。そのため、体内で発生する「エントロピー」、いわゆる身体の中の廃棄物をどう捨てるか、ということが話題になった時期もありました。これに回答を与えたのは、オーストリアのノーベル物理学賞を受賞したエルヴィン・シュレーディンガーさんでした。
エルヴィン・ディンガーさんの話によると、「エントロピー」は、どれも熱やものにくっ付けて捨てていますが、繰り返し捨てられるのは、吐く息だけだというのです。つまり、「調息」によって「エントロピー」を連続して捨てられるということです。
また、吐く息に意識をおくことによって、副交感神経が優位になります。交感神経ばかりが先に行ってしまい、副交感神経が置き去りになってしまいがちな現代のストレス社会の中で、吐く息を意識した呼吸法を行うことで、交感神経と副交感神経のバランスが取れます。これも「調息」の利点です。                
「調身」については、身体の身を整える「上虚下実」法があります。上半身の力を抜くことで、下半身に力が行き、心がいわゆる仏教でいう不動時の状態となります。不動時とは、どんな時も負けない心です。この状態は、人間の内部エネルギーを高められるので、自分の身体をいい方向へ持って行くことができます。
三つ目の「調心」は、何かに集中できる心を準備するということです。徳川将軍家兵法指南役の柳生宗矩に、「剣禅一致」を説いた沢庵和尚が『不動智神妙録』という本の中で書いているのですが、「雑念を払って、心をどこにも置かない。遊ばせておく」といった心境です。「調身」、「調息」、「調心」は三位一体の関係にあるので、心に気がかりなことがあると調心に翳(かげ)りが生じ、調身、調息もうまくいきません。逆に調身、調息を行うことによって、調心が深まるのです。身体と呼吸と心は連動して、正しい姿勢で呼吸をすることが、安定した心の状態を生み、心と呼吸がきちんとしていれば、身体も正しい状態に整っていきます。
このように、気功の「調身」「調息」「調心」の三要が、身体の健康を維持するためのメカニズムになります。
うちの道場は時期によって参加者の増減はありますけど、コロナ前は、1週間で12種類の気功を30コマ行う時もありました。気功は今もホリスティック医学の軸の一つとなっています。 
※エントロピー:放っておくと乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、無秩序になればなるほど大きくなるもの

大屋
大屋

漢方の「薬食同源」の考えに基づいた飲食によって、体質改善、健康維持をはかることも可能でしょうか。

帯津良一 先生
帯津良一 先生

そうでうね。やはり食事も、体質の「証」に合う食事があるので、「虚証」体質の食事法、「実証」体質の食事法など、自分の「証」に合うものを探して、食事を摂るといいです。                                      ただ、食事による体質改善をいうと、「玄米菜食」や食事制限などにこだわって食事をする方もいらっしゃいますが、そこまでこだわる必要もなく、自分の食べたいものを食べればいいのです。例えば、肉が好きな人はすべて肉でも、それで喜びを感じられるのならいいのではないでしょうか。要するに自分の理念をもって飲食することが重要です。心の持ちようも健康を大きく左右します。

一つ例を挙げましょう。パンデミックが起こる前、私は毎年モンゴルへ行っていまして、必ずそこでタタール族の内科医の先生に会っていました。その先生は102歳で大往生されましたが、生前、お酒とお肉が大好きでいらして、会うと流暢な日本語で「肉は俺の石炭だ!酒は俺のガソリンだ!!」とおっしゃっていました。ちなみに、私は「お酒も養生」という持論があって、晩酌は欠かしません。     

つまり、何かにこだわって摂るのではなく、自分がいいと思うもの、自分の好きなものを適量に摂る(・・・・・)のが一番なのです。

私自身の例もお話ししましょう。脳梗塞や認知症など防ぐため、まずは下半身の筋肉を衰えさせないようにと、ステーキやすき焼きで牛肉を食べています。良質なタンパク質を摂らなければいけないですからね。また、骨を弱くしないため、カルシウムを摂っているのですが、その摂り方もちょっと変わっています。豆腐が好きで、50年以上毎日晩酌をしながら昆布だしで作る湯豆腐を食べているのですが、その昆布だしをウィスキーのチェイサーで水代わりに飲んでいます。

一方で自分の食事を作るのが大変な方は、漢方やサプリメントなど、自分にいいと思うもので補っていくのも一つの方法です。「薬食同源」の働きのある漢方や、自分の体質に合うサプリメントを探して、摂り入れてみるといいでしょう。

大屋
大屋

よく「慢性病は漢方、急性病は西洋医学」といわれますが、加齢による身体機能の衰え、抗病力の低下、生活習慣病の予防のために、漢方の役割についてどのようにお考えですか。

帯津良一 先生
帯津良一 先生

前述の通り、漢方は「命の場」に働きかけるので、西洋医薬よりずっと奥は深いです。

ただ、エビデンスが乏しいと思われる所がありますが、漢方4000年の歴史から見れば、漢方の「証」に合う治療法は、いいことだと思っています。

私自身の生活習慣病の予防については、日々の気功や太極拳のほか、漢方やサプリメントを体調に合わせて飲んでいます。

また、認知症については老化現象ですので、症状を遅らせるしか予防方法がありません。認知症予防、老化防止に大切なのは、心のときめきとコミュニケーションが保たれていることです。

大屋
大屋

人生100年時代!健康寿命を伸ばし、日常生活の質を高めるために、漢方にどのような役割があるかを教えてください。

帯津良一 先生
帯津良一 先生

最近の漢方は以前のように煎じて飲むというものではなく、飲みやすいエキスで摂れるようになりました。
漢方とは、漢方薬を含め、気功や太極拳、それから鍼灸のことも指しています。漢方や鍼灸にはまだ多少の欠点はあると思いますが、将来はいい医学になると思います。
西洋医学は身体の故障を「直す」医学であって、いわゆる機械の修理みたいなものです。その一方で、漢方は、身体のエネルギー高めるという「癒す」医学です。従って、西洋医学と漢方は互いの弱点を補い合い、相乗効果をはかると良いのです。さらに、気功なども取り入れて、身体の「癒し」「直し」をうまく組み合わせて健康を維持すると良いでしょう。

す。

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